Ninhursag Ninḫursaĝ

生きづらさの処方箋

想いを還せば



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想いを還せば Ninhursag Ninḫursaĝ


こどものころからです
人さまとはかなり違う
そんな自覚がありました


右と左の違いがわからない
東とか西とかって何だろう
あの月は
この手のひらよりも小さい
けれども
ホントはすごく大きいのか
そうやって
大人たちはウソを信じてる
ボクはそのウソを信じない


今日が何日何曜日とか
今が何時何分かなんて
隣のあの子はいっつも
教えてくれるけれども

それがなんの役に立つのだろう
時計の針をただ追っかけながら
ボクはそうやって首をかしげた


お金の存在意義も理解できないし
食べるものにだって執着がないし
他人が何をしてようと興味がない


将来の不安にそわつく世間の雑踏は
まるでスクリーンの向こう側にいて
過去や未来を話す人々のふるまいに
何のリアリティも感じられなかった


けれども好奇心だけは果てしなく
ゾーンに入れば秒で現実を喪失し
いちど始めたらなかなか止まらず
拘りの沼に取り憑かれてドブ漬け

だから衣食住の営みなんてのも
もっぱら後回しのままintoして
気がつけば身体を壊してしまう


けれどこうして今も生きているのは
幸いにもギリギリでレスキューされ
それでなんとかやっていけてるから


興味が失せてなくなれば
また揺りもどしも激しく
昨夜まで大親友だったハズの
大好きなカブトムシ君だって
朝には’〆‘してゴミ箱の中へ


凝り性で堅物頑固なくせして
興味が失せればヘイトの暴君
その豹変ぶりといったならば
手のひらを返すよりも素早い


両親や先生の顔色なんて
すごく解りやすいかった
大人を察することなんて
なんの苦もなく立ち回り
都合よく騙し素知らぬ顔
そんな自分が正直恐くて

時にはヘタをうつこともある
大人たちの本性を射抜き当て
うっかり地雷をふんでしまう

すると彼らは興奮して沸騰し
口角に泡を溜めながら憤怒し
理不尽を被せて威嚇するんだ


しかたなくその場を取り繕って
まるで癇癪持ちをあやすように
ボクは冷静で沈着で抜け目ない
どちらが大人なんだか知れない
子どもには加減してほしいもの


日常には失望してため息ばかり
本心は決して出してはいけない
そうやってナイフで心に刻んだ
こうして子どもながらに学んだ

情熱根性とかの熱い系は苦手だ
一ミリだって反りなど合わない
その世界観を想像するだけでも
脳ミソがショートし湯気をだす
それでも理解者のフリを演じた

人の気持ちが透けて見えるくせに
自分のことは察知されるのが恐い

そんな身勝手なクソ野郎だから
相手の目を覗けやしないし
相手に同調することもない
果てしない負荷と疲労に襲われ
過労死の可能性すら頭をよぎる


群れるという行為なんて
とびきりに嫌悪を感じる
もちろん皆の輪になんて
近づきさえもしたくない

目立つことが大きらいで
いつも一人でいたかった
突飛なアイディアが浮かんだとて
誰かに伝える衝動には繋がらない


そもそも競争は好きじゃないから
勝っても負けても一切無感情だし
楽しく罰ゲームしている風景など
理不尽極まりない拷問でしかなく
地球の裏側まで逃げたいと願った


大っきな音が苦手だから
街の雑踏に目眩いがする
サイレンの類は極悪劣悪
脳内のビジーカーソルが
暫くのあいだ止まらない


静かな広い空間が好きで
一人きりになれるならば
そこが自分の終の砦とばかりに立て籠る
ホームシックなんて微塵も理解できない
家族を亡くした時だって寂しくなかった


真っ暗な夜はやっぱり怖いけれど
夜空を仰げばずっと飛んでいけた
なにかに抱かれて温かいと感じた


不思議なことが大好きだったし
宇宙人の存在に心は踊っていた


見知らぬ場所の夢をよく見る
それがどこか判らないけれど
何度も 何度も 何度だって
いつも同じ場所から同じ景色
そこは色も音も香りもリアル

大人になった今
それはまだ続いているのです
昨日もまた_いつもの同じ夢


やっぱりボクには月が小さく見えるのです
小さく見えるのはホントに小さいのだろう

Ω 𒀭𒎏𒄯𒊕 _